© Aiko Yamamoto

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空音の彷徨

TAMAVIVANT Ⅱ展

アートテークギャラリー

2017

1200×900/mm​

Soundless

TAMAVIVANTⅡ

Art take gallery 

2017

1200×900/mm​

〈next      prev〉

“素”から語られる世界

 山本愛子が用いる技法の一つとして染がある。染料の織りなす色の変化は、時間とその時々の状況下によって左右される。色の鮮明さは色づいたその時が一番鮮明だが、色の持つ性質は時が経つにつれ、表面化され、上層部の支持体の下で何かがうごめくような緊張感がある。染によって創り出された皮膚のような薄い膜は、繊細で静かな音を奏でるかのように作品の枠を超えて広がる。染の織りなす色の層は単なる混色ではなく、どこか不思議な透明度を持った色を兼ね備えている。色の重なりは本来の色が持つ物質としての性質を崩すことなく、安定した世界を構築しているようである。色、光、質感のどれを取っても、山本の作品はどこか安定した厚みが内在し、作品を構成する要素の蠢めく変化にまで語りかけている。用いられる素材、染料、技法はときに時間や環境によって変化し得るものである。それらが単体で存在している状態から、環境要因、物理的要因、化学的要因によって変化を起こし、ときに複合的な集合体になるという可能性を含有しているともいえる。
 山本は周知されている概念や理論を受動的に捉えるだけでなく、複雑に絡み合った要素を一旦解離させ、作品に用いる素材そのものを実験的に組み直した上で、新たな認識の上で再構築しているとも言える。化学反応式のように構成する物質の量的な関係を表す認識の仕方があるように、物事にも構成する要素が存在し、さらにそれらが合わさることによって成り立つ理論が存在するということも確かではないだろうか。形而下では既知されていることも、新たな認識や姿勢を持ち、違った角度から見直すことで、偶然と必然によって左右されがちな事象を自己の選択によって捉え方から変えることができると考える。
 山本の作品は独自の均衡を保ちつつ、従来とは違った世界への可能性を再提示しているとも言える。物事を構成している要素は様々な要因によって複雑に絡み合い、変容し、ときに安定した状態に留まる。この世界を形作る事象は、ときにそのような離合集散を繰り返しながら可視化、もしくは不可視的なものとして日々変化を遂げていると言えるのではないだろうか。
 作品を通じて、理論に対して深層部まで突き詰める姿勢の重要性、素材の持つ性質や数字の持つ数値性を探りながら徐々に細分化し、再構築するプロセスが他者を通じて違った認識や理解へと繋がれば幸いである。

文=奥田 舞