Gravity Dyeing

松浦邸土蔵

2020年

Gravity Dyeing

Matsuura Storehouse

2020

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​展示会場の松浦邸土蔵外観

普段はウェブサイトに展示ごとの感想を載せていませんが、今回は展示自体が中止になってしまったこともあり、少しこの展示に対する思いを綴ってみようと思います。

 

去年もこの大子まちなかアートウィークに参加させていただき、旧大丸倉庫で「山の雫」という作品を展示しました。八溝山の湧き水をいただいて、重力にそって水をたらしながら布を染めた作品です。本作品のテーマも前作品に続いて「水と重力の痕跡」を染色で表現することを試みました。

 

染料を含んだ水を布に垂らすと、水はやがて蒸発し空気中へ去っていきますが、色は布が乾いたあとも繊維のなかにとどまります。水と重力の痕跡を、布と染料によって遺していくという行為によって生まれた作品群です。

 

今回、展示会場である土蔵の空間からも多くのインスピレーションをいただきました。下見ができずに搬入日に初めてこの土蔵と対面することになりましたが、木の柱で構成された力強い空間を初めて見たときに純粋に美しいなと感動しました。そして、自分の持ってきた作品をただ設置するというよりは、この空間に作品を寄り添わせていきたいという思いがわいてきました。

 

そう思い立って、柱や階段のサイズをはかりはじめ、それに合わせて木材と持ってきた作品の布をカットしていきました。工房できちんとサイズを測って染めた布を現場で躊躇なくカットしている自分に驚きつつも、「布」だからこそ軽々とそういうことができるんだろうなあ、自分は布のそういう軽さが好きなのかもしれない、と気づかされたりもしました。

 

元々は持ってきた布の作品をテグスで軽く天井に止めて、それが風に揺れたりして鑑賞できたら気持ちがいいかなと思っていましたが、この空間を目の前にするとそうは思いませんでした。街中から少しだけ離れてしんとした立地にたたずむ土蔵。布の上に染まった流動的な線は思った以上に空間の中で異質に際立って見える。また、この建築の水平垂直の力強さも、作品があることで際立ってみえてきた。布の上の痕跡以外の要素はかっちりしていた方がいいのだろうと感じはじめる。空間のバランスを見て歩いて感じながら慎重に設置場所を決めていきました。水平に染めたものは水平に展示してみたり、染めていた時と同じ角度で斜めに床に置いてみたり。布が物質として空間に在るということをよく意識して。

 

こうして空間と遊びながら手を動かしていると、制作、搬入、展示、と、はっきりした境界はなく、制作中の感覚が展示まで糸を引くようでした。展示が始まってからも、光を追って照明をいじってみたり、繊維越しに人影が透けうごめく景色や、朝と夕の異なる土蔵の色彩を町の人と共有したりと、とっても素敵な経験をしました。こういうことがのびのびとできるのは、大子町のおおらかさと人々の包容力があってのことだと思います。残念ながら短い期間になってしまいましたが、この土蔵と共にささやかなかけがえのない時を皆様と楽しませていただきました。

 

2020年2月26日

 

山本愛子

© Aiko Yamamoto

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